今回のタイトルはアーバンチャンピオン。1984年に任天堂から発売されたファミコン用ゲーム。僕らはすぐにこれに夢中になった。正確にいえば、物心ついた頃には夢中になっていた。ゲームのルールは単純で上段と下段のパンチにそれぞれの強弱があり、計四つのパンチを打ち合う。ガードは上段下段とスウェーの3つがあった。
兄弟の間で揉め事があるとアーバンチャンピオンで決着をつけることになった。僕らにとってそれはジャンケン以上にフェアなルールだったからだ。繰り出されるパンチは、頑張れば見切れる早さなのだが、一瞬油断するとふっとばされる。そんな絶妙なゲームバランスの上にできていた。本当に行きが止まるほど集中した。負けられない戦いほど集中力が増した。アーバンチャンピオンは揉め事のどちらが譲れないかを測るフェアなルールだった。
そしてパトカーが通りすがる。パトカーはこのゲームにおいて唯一の運の要素。このゲームでは画面3個分吹っ飛ばされると負けになる。ただしパトカーがくれば殴り合いを中止して元の位置に戻される。ギリギリのところでのパトカーは単調さを排除してくれる。運の要素が多ければゲームをする必要がない。ただし運の要素がなければ単調なものになってしまう。運はこのゲームのスパイスだった。
実は運以外でパトカーがくる時が一度だけある。それはタイムアップの時だ。タイムアップ時に体力の少ない方がパトカーに連れていかれる。いわゆる判定負けとなる。まだ小さな僕は、そんな時間切れなんてことがあるなんて思わずに、連行されるのも運だと思っていた。そしてふと思った、子供の頃は遊びに終わりがあるなんて思いもしなかった。人生に終わりがあることを理解をできなかった子供でも勝ち負けは理解できた。アーバンチャンピオンは勝ち負け以外の終わりがあるということを教えてくれたのかもしれない。
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